今回の記事では「小型環境試験器」の、おすすめメーカーと価格相場について紹介します。
目次
小型環境試験器の種類
環境試験器とは、様々な環境状態を再現し試料に起こる変化を測定する試験機器です。今回の記事では環境試験器の中でも小型な産業用の機械をご紹介します。
小型環境試験器の分類は大きく7つに分けられ、以下のような違いがあります。
① 小型促進耐候試験器
小型促進耐候試験機とは屋外の天候への耐久性を評価することの出来る小型の試験機です。
主に試料の劣化に繋がる光、水、熱の要素を設定によって試料に与えることでその耐久性を評価します。
三要素全ての試験が出来る試験機から1つの要素の試験しか出来ない試験機まであり、他の分類に分けた試験機にも小型促進耐候試験機に分類されて販売されている試験機もあります。
② 小型冷熱衝撃装置
小型冷熱衝撃装置は高温と低温を交互に短時間で与えることで、以下の変化を計測できます。
- 複数の素材で構成された部品の素材ごとの温度の影響の差
- 材料が単体であっても厚みなどの差によって起こる温度変化の差
- 繰り返される温度差による疲労
詳しくは冷熱衝撃装置の記事も参考にして下さい。
▼関連記事:冷熱衝撃装置のおすすめメーカーと価格相場
③ 小型塩水噴霧試験器(小型キャス試験機)
小型塩水噴霧試験機とは文字通り試料に塩水を噴霧し腐食を促進させ試料の耐性を評価する小型の機器です。
主に塩害に対する腐食の評価に使用されることが多い試験機です。
よく似た試験機に小型キャス試験機というものがあり、その違いは噴霧する塩水がアルカリ性か酸性かの違いで小型塩水噴霧試験機はただの塩水でアルカリ性なのに対してキャス試験機は塩水に酢酸などを加えて強酸性にし噴霧します。
そのため似た試験機ではありますが、試料によって使い分けられることが多いです。
④ 小型恒温器
小型恒温器とは試料をある一定の温度に保った試験槽の中に入れておくことで温度による変化や耐久性を評価する試験機です。
小型恒温器の中にも、
- 低温だけにできるもの
- 高温だけにできるもの
- 低温高温どちらにもできるもの
- 湿度の調整もできるもの
など小型の環境試験機の中では最も種類、製品が多く、小型環境試験機といえば恒温器を思い浮かべる方が多いでしょう。
耐薬品性試験などにも使用されることもある小型環境試験器です。
⑤ 小型振動試験器
小型振動試験機とは試料に振動を与えて破損や故障を評価する小型の試験機です。
製品によって振動の与え方やパワー、上限周波数などに違いがあります。
⑥ 小型高加速寿命試験装置(HAST装置 / PCT装置)
主に耐湿性の評価などで使用される試験機です。
小型高度加速寿命試験装置はプレッシャークッカー試験(PCT)と呼ばれる試験槽の中を100℃以上の高温高密度の水蒸気雰囲気下にし、試料の湿度による劣化を測定する仕組みです。
試料の湿度による劣化を加速させることに加えて、試験槽内の圧力を上げることで試料の内部にまで湿気が入ることにより劣化を加速させることも可能です。
詳しくは高度加速寿命試験装置の記事も参考にして下さい。
▼関連記事:高度加速寿命試験装置のおすすめメーカーと価格相場
⑦ 小型複合環境試験器
小型複合環境試験機とは上記で説明した小型環境試験機の機能を複数兼ね備えた試験機です。
主に組み合わされ使用されるのは振動型の試験機で、他の試験機と組み合わせることでより過酷な環境を再現し試料の評価が可能となっています。
その他にも様々な組み合わせの小型複合環境試験機があります。
小型環境試験器を製造するおすすめメーカー
小型環境試験器を扱う主要メーカーの中から3社ご紹介します。
エスペック株式会社(ESPEC)
出典:ESPEC
1947年に創業した環境試験器を扱う老舗メーカーです。
日本で初めて環境試験器の開発をしたメーカーでもあり、高い技術力と独自の品質保障体制で世界的に高い信頼を得ているメーカーです。
環境試験器の日本国内シェアは約60%、世界シェアは約30%程度と、業界トップクラスのシェア率を誇っており、今回取り上げた冷熱衝撃装置も多くのラインナップを有しています。
IMV株式会社
出典:IMV
1957年に創業した振動試験装置をメインに製造、販売する老舗メーカーです。
ソニーやキヤノン、京セラなどを始めとした大手メーカーへの納品実績も多数あり、技術力や信頼性の高いのも一目りょう然です。
同社は小型環境試験器の中でも「小型振動試験器」を扱っています。
高温試験器などのラインアップはありませんが、振動試験器についての評価はとても高く、小型なものも複数取り揃えられています。
株式会社東洋精機製作所(TOYOSEIKI)
出典:TOYOSEIKI
1934年創業の各試料に適した評価に使用される各種試験機や測定器を専門とした老舗メーカーです。
日本国内外に数多くの拠点、代理店のある信頼性、技術力のあるメーカーです。
製品の信頼性だけでなく新技術の研究やアフターサービスにも大変力を入れておりそのような面でも評価が高いメーカーになっています。
小型環境試験機については小型促進耐候試験機のみを扱っており、世界的にも高いシェアを誇っています。
耐候試験機については世界的なメーカーであるアトラス・エレクトリック・デバイス社と提携しており世界トップクラスの技術を有しています。
小型環境試験器の価格相場
小型環境試験器の価格相場は数万円〜数百万円程度です。
低温のみや高温のみに対応する単純な小型恒温器などであれば10万円前後の機器もありますが、他の機器では安いものであっても数十万円程度、複雑な試験機においては数百万円になることも多くあります。
お問い合わせやお見積りのご相談は「お問い合わせフォーム」よりお願いいたします。
小型環境試験器の選び方
小型環境試験機の選び方としてはまずはどのような試験を行いたいかによって分類を絞っていきましょう。
分類が決まればどの程度の機能が必要かを検討します。
小型環境試験機は文字通り小型であるため測定できる試料は限られてしまいますが、機能としては単純なものから本格的な研究、評価が可能なものまで幅広くあります。
もちろん機能が多彩になっていけばその分価格も高くなる傾向にあるため、オーバースペックの試験機を選んでしまっていないかも考えてみることも重要でしょう。
小型環境試験器のまとめ
今回の記事では小型環境試験器について解説しました。今回の記事内容を簡単にまとめます。
- 小型環境試験器とは、疑似的環境下における試料の変化を測定するための装置
- 「耐候試験」や「冷熱」「衝撃」など、様々な環境テストが可能
- 機器自体は環境に合わせて調達する必要があるが、おおむね7つに分類されている
- 主要メーカーは「IMV」や「東洋精機」「エスペック」などを筆頭に20数社
- 小型環境試験器の価格相場は、装置・仕様にもよるが数十万円~数百万円
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■執筆担当者:KenOs 昼は自動車整備士、夜は覆面の執筆者、趣味はバイクという、ライター界きっての機械マニア。 そんな機械に囲まれた最高の生活を送っているが、そろそろお金と美女にも囲まれたい、バイクには乗れるが時代の波にももっと上手く乗りたい……といった悩みも。 |