マシニングセンタの価格相場
マシニングセンタの価格相場は1,000万円~数億円程度です。
立て形で小さい機種なら1,000万円程度から、5軸や門形で大きな物になると数億円するものもあります。さらに高精度なものほど価格が高く、オプションや独自のカスタマイズにも影響します。
また、ツールスタンドなどの導入時にかかるイニシャルコスト以外にも費用が発生します。
刃物などの消耗品、切削オイルやその処理費用だけでなく、テーブルや主軸の精度測定を含むメンテナンス費用、工作物を固定するためのチャックやコレット、必要に応じて追加のツールホルダ購入などがあるので、これらのランニングコストも含めて予算を作る必要があります。
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マシニングセンターごとのタイプごとの価格
縦型マシニングセンター
テーブルサイズ | 価格相場 |
---|---|
70✕60センチ | 2,500万円~4,000万円 |
90✕80センチ | 3,000万円~5,000万円 |
1,10✕58センチ | 4,000万円~7,000万円 |
1,50✕60センチ | 4,500万円~7,500万円 |
横型マシニングセンター
加工する対象であるワークサイズによって価格が変動します。例えば50センチ四方であれば3,000~5,000万円、60センチ四方であれば4,000~7,000万円、80センチ四方であれば
ワークサイズ | 価格相場 |
---|---|
50センチ四方 | 3,000万円~5,000万円 |
60センチ四方 | 4,000万円~7,000万円 |
80センチ四方 | 5,000万円~9,000万円 |
100センチ四方 | 1億円前後 |
5軸加工機
丸テーブル直径 | 価格相場 |
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40センチ | 3,000万円~5,000万円 |
50センチ | 4,000万円~7,000万円 |
マシニングセンター価格のクチコミ
鋳物や部品加工を目的として、ヤマザキマザック社のVARIAXIS i-300awcを8,000万円で購入しました。
牧野フライスの縦型マシニングセンターであるV77を1,500万円で購入しました。
自動車用ステアリング用ギアのアルミのハウジング機械加工を目的として、小型マシニングセンタであるファナックのロボドリルを1,000万円で導入しました。故障、不具合等あればサービスがすぐさま対応して頂けるが、その費用がかなり高額なことに困っています。
半導体検査装置の部品加工目的で松浦機械製作所のマシニングセンタであるCUBLEX-35を周辺機器抜きで8,000万円で購入しました。
家電の部品を製造するために5軸マシニングセンタを3,500万円で購入しました。
マシニングセンタメーカー各社のメリット・デメリット
マシニングセンタを扱う主要メーカーは約20社ありますが、その中から国内シェアの高い会社をご紹介します。
DMG森精機株式会社|泣く子も黙る世界的巨大メーカー
出典:DMG MORI
2015年にドイツの老舗工作機械メーカーであるギルデマイスターグループを完全子会社化し、ドイツのトルンプに次いで世界第2位のシェアを持つ(2023年時点)のメーカーとなりました。マシニングセンタ、複合加工機、5軸加工機などのハードだけでなく、ソフトウェアも併せて提供しています。
自動車メーカーで多く採用されており、他にも航空機、医療、建機などの業界で愛用されています。
●強み
世界中での知名度と顧客基盤、製品ラインナップ、技術力だけでなくデザイン性にも強みが有る会社です。また、社長の2代目経営者である森雅彦社長のカリスマ性も社内外から高く評価されています。
国内に4カ所、海外ではアメリカ、中国、ポーランドに各1カ所、ドイツ3カ所、イタリア2カ所と、合計12カ所の開発生産拠点があるので地政学的なリスクをある程度分散出来ていると言えます。
●弱み
ハイエンド機が中心になっているので価格水準が高く、不景気の環境下では社内的に理解が得にくいケースも多いようです。
DMG森精機のマシニングセンターのクチコミ
DMG森精機の nh5000 を使っています。使い慣れたDMGの横型マシニングセンターでモニター等も見やすく使い勝手がいいので 高評価です。(機械加工プログラマー)
ヤマザキマザック株式会社 ”二番煎じ”の名手
出典:MAZAK
創業100年を越える非上場の工作機械メーカーで、CNC旋盤、マシニングセンタ、レーザー加工機、複合加工機、5軸加工機、ハイブリッド加工機など幅広い製品レンジを展開しています。
生産拠点は、国内5カ所、中国2カ所、イギリス、アメリカ、シンガポールの計10カ所あります。高度熟練技能者を訓練学校や高等学校へ派遣し、技術継承にも取り組んでいます。
開発から生産、販売、海外への輸出まで、自社で行うのも特徴です。
●強み
市場に求められる機能を確実に開発することが得意なので、ユーザからは安定した評価を得ています。サービス拠点が世界に80箇所存在しているので、広いエリアで手厚い顧客サポートが可能です。
●弱み
上手に二番煎じをすることが強みである反面、研究開発はそれほど高く評価されておらず、新規性のある商品を求めているユーザには向いていません。
ヤマザキマザックのマシニングセンターのクチコミ
少量多品種に注力していましたが今後は中ロット加工にも対応すべくVARIAXIS i-300awcを導入しました。1台で複数工程を同時に進められるので小売率的で分納も可能なのでメリットを感じています。
オークマ株式会社|ハードもソフトもお手の物
出典:OKUMA
創業120年を越え、海外シェアは高く有りませんが国内では屈指のマシニングセンターメーカーで、航空機関連や造船分野など、重厚長大産業向けの大型工作機に強みがあります。
機械とNC装置をともに自社開発していることが特徴です。そのため機械だけでなく電気系もオークマ1社で保守することが出来ます(例えばヤマザキマザックは三菱電機のCNCを利用)。
アメリカのGEグループとの協業も行っています。アメリカ、ブラジル、ロシア、トルコ、ドイツ、インド、オーストラリア、タイ、ベトナムなど、世界15の国と地域に、グループ企業を持っています。
●強み
門型マシニングセンターは累計出荷台数1万台を越えており、実績が豊富です。
機種数やオプションが非常に幅広いので、他のメーカで対応出来なかった要望をオークマであれば対応できるというケースがあります。
●弱み
顧客ごとのカスタマイズ製に優れる反面、製品の幅が広いため保守の満足度に顧客ごとでバラツキがある印象です。
株式会社牧野フライス製作所|精度では負けません
社名の通りフライス盤に強みが有るメーカーです。
低価格の量産品を好まず、高精度・高速・高価格を貫く質実剛健のマシニングセンターメーカーで、加工テストで他社と比較するとその技術を実感しやすいでしょう。
安価なラインナップが無いため価格競争には弱いものの、品質に厳しいユーザから今後も高く評価されていくと思われます。
牧野フライスの縦型マシニングセンターのクチコミ
金型製造現場での加工の高速化と精度向上を図るため、牧野フライスの縦型マシニングセンターであるV77を購入しました。他社に比べて値段はかなり高かったが、加工精度に関しては抜群であった。流石牧野フライス製だと改めて感じた。
株式会社松浦機械製作所|業界の革命児
巨大企業が居並ぶマシニングセンターメーカーにあって、従業員数400名という少数精鋭で異彩を放っているメーカーです。
5軸マシニングセンターや3Dプリンターにいち早く取り組んだ先見性があるメーカーで、松浦機械製作所の商品に他社も特に注目している印象で、上手に後追いすることで着実な製品開発をするヤマザキマザックとは対象的な会社です。
株式会社松浦機械製作所のクチコミ
松浦機械製作所のCUBLEX-35を利用しています。精度、使い勝手は、まったく問題無く、大満足である。消耗品の減りが早いところが数少ない難点だ。
三井精機工業株式会社|精度の三井と呼ばれたが
1928年に設立された歴史ある老舗メーカーです。当時は精密測定機器と工作機械を製造していましたが、現在はコンプレッサーと工作機械を作っています。
特にジグボーラー(位置決め・削りが手動)や研削盤に強く、精度の高さが売りですがその分価格も高く、近年は工作機械部門の赤字をコンプレッサー部門で補っている状況が続いていると言われています。
芝浦機械|今も残る東芝の残り香
1938年に芝浦機械の前身である芝浦工作機械が設立されました。1961年に東芝機械(東京芝浦)となりましたが、2017年に東芝が筆頭株主から外れて現在の社名に変わりました。
門型など大型のマシニングセンタに強く、自動車業界で多く採用されています。
倉敷機械株式会社|その手があったか
新潟県長岡にある工作機械などの工作機械を製作するメーカーで、横中ぐりフライス盤では国内で2位のシェアがあります。5軸マシニングセンターに横中ぐり主軸を追加した「6軸マシニングセンター」という新しいコンセプトを打ち出しています。
エンシュウ株式会社|自分でも使ってます
工作機械メーカーであり、さらに自社もその工作機械で部品を加工して提供している珍しい会社です。
株式会社ワドー
住商ワドー(株)から分離独立した新潟県のメーカーで、キヤノントッキや三菱マテリアルテクノなど、県内の優良企業に工作機械を提供しています。
ワドーのマシニングセンターのクチコミ
アルミニウム製部品の穴あけ及び面削加工でワドーのマシニングセンターを使っています。ツール交換の時間が短縮でき、特に量産加工ではタクト効率が上がりました。このマシニングセンタは脚とxyz軸のユニットが切り離せるので省スペースでライン加工用にアレンジできるところが最大の売りです。又ストローク400に対し動的精度は、0.01mmとなります。
工作機械メーカーごとのシェア
2023年時点での、推定での各メーカーの工作機械事業でのおおよその売上高です。
メーカー | 売上規模(推定) |
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DMG森精機 | 4,000億円 |
ヤマザキマザック | 4,000億円 |
牧野フライス製作所 | 1,900億円 |
オークマ | 1,700億円 |
ジェイテクト | 1,500億円 |
ブラザー工業 | 1,100億円 |
芝浦機械 | 1,100億円 |
ツガミ | 900億円 |
シチズンマシナリー | 800億円 |
マシニングセンタの種類
マシニングセンタとは自動工具交換機能(ATC:AutomaticToolChange)をもつ工作機械で、固定した工具(刃物)の段取り替えをすることなく、フライス削り、穴あけ、中ぐり、ねじ立てなどの加工を連続で行うことができます。また、コンピュータ制御(CNC)がされているので、高精度な加工を無人で行うことが出来ます。
マシニングセンタは、大きく4種類に分けられ、以下のような違いがあります。
①縦型(立型/立形)マシニングセンタ
刃物を上から下に当てて対象物に穴を開けたり、削ったりするマシニングセンタです。
単純に上から下に、一点だけを削るのではなく、縦、横、上下に動かすことが出来ます。この時、上の動画のようにテーブルが動くテーブル駆動式と、刃物がある主軸が動く主軸駆動式の2つがあります。
門型や5軸加工機と異なり省スペースで設置でき、導入コストも安価です。
②横型マシニングセンタ
対象物を横から削る構造になっているのが横型マシニングセンターで、縦型と比較すると価格は高額です。立形と異なり削りカスが自動的に下に落ちていくので、切り屑の排出性に優れています。
縦・横・上下動に加えて、テーブルが回転する4軸制御のものもあります。
③門形マシニングセンタ
対象物を機械がまたぐような門形のコラム門に、主軸が取り付けられているマシニングセンタです。
架台などの大物加工に使われ、縦型や横型よりもさらに高額です。
さらにヘッドが回転するタイプは5面加工機(次でご紹介する5軸加工機とは別)と呼ばれます。
④5軸加工機
縦・横・上下だけでなく2軸の傾斜を加えることが出来るのが5軸加工機です。
立て形に比べて以下の面でメリットがあります。
- 段取り替えが削減出来る
- 特殊工具や専用治具を使用しなくて良い
- 刃物を斜めに当てることで、摩擦が少ない刃物の真ん中(周速ゼロ点)を避けられる
そのため複数のマシニングセンターを5軸加工機に置き換えられる可能性がありますが、価格は1億円を越えるケースもあるほど高額です。
マシニングセンタの選び方
加工するワークの種類や大きさによって、導入に適したマシニングセンタの種類が変わります。
少量多品種なら、立形マシニングセンタが、同じ製品を大量生産するなら横型マシニングセンタが向いています。また、横型は刃物を水平に装着するので、刃物やワークの重さでタレが発生しやすく、大きく重いワークより小さく軽いワークの加工に適しています。
5軸マシニングセンタは、3次元形状など特殊なワーク形状の加工が可能ですが、立て形の代わりに導入するには、イニシャルコストが大きいので、費用対効果の十分な計算が必要です。
大物加工には、門形のマシニングセンタが最適です。設置スペースの大きさはもちろんですが、ワークの脱着時の待機スペースや、走行クレーンの設置も含めて導入する機械と設置場所を考える必要があります。
マシニングセンタのまとめ
今回の記事ではマシニングセンタについて解説しました。今回の記事内容を簡単にまとめます。
- マシニングセンタとは自動工具交換機能をもつNC工作機械のこと
- 軸の方向によって「立形」や「横形」などのち外がある
- 主要メーカーは、「ヤマザキマザック」「DMG森精機」「オークマ」など
- マシニングセンタの価格相場は、1,000万円~数億円程度