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定置スポット溶接機の価格相場
定置スポット溶接機の価格相場は数百万円~数千万円と幅があります。
作業者定置、ロボット定置に共通して発生する費用として以下のものがあります。
- 上部電極と下部電極や、ホーンを、標準品から変更する
- 冷却水の流量計やフローメータなどを追加する
- ワーク供給にパーツフィーダを用いる
- 設備の運搬設置用に、架台を追加する
この中では、パーツフィーダが高額なため、その有無が金額に大きく影響します。パーツフィーダは、金額納期ともにかかるため、通常客先からの支給品になります。加えて、電元社トーア(株)や(株)中央製作所の定置式スポット溶接機(装置)も、客先からの支給品になることがほとんどです。
これ以外に、作業者定置の場合は、操作パネルやボタンの設置が必要です。
ロボット定置の場合は、既存の設備に追加するのか、新規でセル(ロボットを含む装置全体)ごと製作するのかによって、金額は大きく変わります。ロボット定置をセルごと新規製作する場合、数千万円の設備になることも珍しくありません。
他には、製作定置を用いるとき、市販の定置式スポット溶接機(装置)に製作定置を追加して、双頭ガン定置にする場合は、トランスは不要ですが、製作定置を単独で使用する場合は、トランスが必要になります。トランス追加の有無によっても、金額が違ってきますので、忘れずに計上する必要があります。
定置スポット溶接機おすすめメーカー
定置スポット溶接機は、溶接機を作成しているメーカーに発注する方法が一般的です。こちらでは溶接機を扱うメーカーとして代表的な1社を紹介します。
MACHINPRO株式会社
出典:MACHINPRO
MACHINPROは、2002年創業の比較的若い機械メーカーです。
ほぼ全てを受注生産(特注品)としており環境に合致した仕様ベースの製品づくりを得意としています。
定置スポット溶接機(設備)の種類
定置スポット溶接機とは、スポット溶接の工程で使用する産業用の機械です。
スポット溶接とは、抵抗溶接の一種。ワークを電極で挟んで加圧し、電流を流して溶接します。スポット溶接の電極(を含む溶接装置)が、床に固定されているものを、定置スポット溶接と呼び、定置スポット溶接を行う設備が、定置スポット溶接機(設備)です。
一般的に、定置スポット溶接機(設備)は、電元社トーア(株)や(株)中央製作所から市販されている、定置式スポット溶接機(装置)を使用して製作します。
他には、定置式スポット溶接機を使わず、ガンシリンダ(加圧側電極)とCヨーク(ブラケット)を用いた、製作定置と呼ばれる溶接機を用いて、定置スポット溶接機(設備)を製作することもあります。
定置スポット溶接機(設備)の分類としては、大きく2つに分けられ、以下のような違いがあります。
作業者定置
定置スポット溶接機(設備)へのワーク脱着を、作業者が行う設備です。
定置スポット溶接機に治具を設置し、押しボタンやフットペダルなどを作業者が操作して、スポット溶接を行います。
安全対策として、溶接機本体(装置)からブラケットを取り出し、エリアセンサを設置するのが一般的です。
パーツフィーダによるワークの自動供給が難しいものや、マテハン(ロボットハンド)で把持しにくい小物ワークなどは、作業者定置に向いています。
ロボット定置
マテハン(ロボットハンド)でワークを持ち、スポット溶接を行います。そのため、定置スポット溶接機に治具は設置しません。ロボット可動範囲に、定置式スポット溶接機を複数台設置し、ナット打ちとボルト打ちを行うなど、1つセルで複数工程を行うことが多いです。
この方式ではマテハン取り出し用治具へのワーク脱着のみ、作業者が行います。パーツフィーダで供給できるナットやボルトの溶接、または、打点数が多いワーク(20打点以上など)の場合は、ロボット定置に向いています。
※注:「定置」「定置スポット」について通常、設備メーカーが使う「定置」または「定置スポット」という言葉は、治具やパーツフィーダなど一式を含めた、定置スポット溶接機(設備)のことを表します。
電元社トーア(株)や(株)中央製作所から市販されている、定置式スポット溶接機(装置)についても「定置」と呼ぶことがあるため、混同する場合があり、注意が必要です。
定置スポット溶接機(設備)の選び方
まずは、市販の定置式スポット溶接機(装置)を使用できるか検討します。
特に、電極ストロークは伸ばすことができないため、ワーク脱着が可能かどうか、判断する必要があります。電極の懐深さについては、ホーンの延長や、三角ホルダを用いることで対応可能な場合があります。もし、ストローク、懐深さどちらも満たせる市販品がない場合は、製作定置を検討します。
同時に、ワークの母材形状や、熔接したいワークの種類(ナットやボルトの種類など)および打点数から、作業者定置にするのか、ロボット定置にするのかを決定します。特に、打点角度や位置が何種類もある場合は、治具で対応するのは難しいので、作業者定置ではなく、ロボット定置の方が適しています。
さらに、作業者定置、ロボット定置ともに、ワーク供給にパーツフィーダを用いるかどうか決定します。
ロボット定置の場合、1つのセルにいくつ定置スポット溶接機(設備)を設けるのかによって、金額も設備設置面積も大きく異なります。ロボットの可動範囲がギリギリの数値だと、姿勢によって、溶接不可となる場合があります。シミュレーションによる十分な検討が必要です。
また、ロボットの可搬重量に余裕がないと、不具合対策として、クランプの追加などの対応がとれなくなります。余裕を持たせる方が望ましいでしょう。
他に、作業者定置の場合、ワークセット高さ(作業高さ)を考慮する必要があります。例えば、運搬と設置のため、定置スポット溶接機(設備)に架台が設定されている場合、ワークセットの高さが高くなりすぎ、作業者用の踏み台などが欲しくなることがあるからです。
定置スポット溶接機のまとめ
今回の記事では定置スポット溶接機について解説しました。今回の記事内容を簡単にまとめます。
- 定置スポット溶接機とは、スポット溶接の工程で使用される機械や設備
- 作業者がワークの設置や操作を行う作業者定置や、ロボット(マテハン)で行うロボット定置などがある
- 溶接機を扱うメーカーにオーダーするか自社作成などとなる
- 定置スポット溶接機の価格相場は数百万~数千万円。設備の仕様や規模などで大きく変わる
- 既製品を使用するかオーダーメイドにするかなど様々な点を考慮し選定する必要がある