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半導体モールディング装置の価格相場
半導体モールディング装置の価格相場は非公開なので、金型および装置本体それぞれの価格から推定しました。
- 金型:汎用は200万ファインピッチのデバイス(先端品)の場合は、推定300万円~500万円程度(※)。
- 装置本体:推定3,000万円~5,000万円
金型を搭載しないモールディング装置は、真空システムなどフルスペックでおよそ4,000万~6,000万円程度と想定されます。
※実際に量産する場合、3モジュールを全て連結する場合は、その3倍かかりますが、先端品は生産数が少ない場合は1モジュールだけ使用する時があります。
半導体モールディング装置 の種類
半導体モールディング装置とは、半導体製造のモールド工程で使用する産業用の機械です。
半導体モールディング工程は、その前工程であるワイヤボンディング工程にてボンディングされたチップとワイヤ全体を保護するための工程です。
エポキシ樹脂で全体を覆う工程を指し「成形」とも呼ばれます。
具体的にはリードフレームを金型ではさみこみ、金型に圧力をかけて、金型穴より溶かしたエポキシ樹脂を注入して樹脂を固形する工程となっており、これらを自動で行う装置を「半導体モールディング装置」と呼称します。
分類としては大きく2つに分けられ、以下のような違いがあります。
フェイスアップ方式
一般的に用いられており、ワイヤボンディングされたチップを搭載するリードフレームを金型上に上向きに置きます。
金型内で一旦溶融された樹脂を上と下の金型で閉めた後、上金型のプランジャーという穴から注入させ、両金型に圧力を加えてることで硬化させます。
最近主流となっている1000ピン以上の100µm以下のピッチの接続ワイヤの場合、溶融樹脂供給の際に流速や樹脂自体に柔らかさがないと、ワイヤ同士のショートが起きてしまいます。また硬化後に空乏(ボイド)が起こるとワイヤを切断してしまう等の不良が発生するため、最適なエポキシ樹脂と装置のマッチングが必要です。
この樹脂は信越化学など日本がノウハウを独占しており、海外では現状追随できない技術となっています。
フェイスダウン方式
下金型に顆粒状の樹脂を広範囲にばらまき、溶融直前に対象部を浸けるようにして、モールドする方法です。
この時に上金型を閉めるとワイヤの流動の防止を行うため、広範囲なモールドが可能となります。
前工程のウエハを個片(チップ)にせずワイヤボンディングする電極上に半田バンプなどを付けたウエハ(ウエハレベルモールド)や、薄いチップを多層にテープなどでダイボンド(スタックCSPなど)されてワイヤボンドのワイヤが立体に交差している製品は、フェイスアップでは対応できないため、本フェイスダウン方式にてモールディングを行います。
半導体モールディング装置メーカー各社のメリット・デメリット
半導体モールディング装置を扱う主要メーカーは、2社あります。シェアではTOWA(約80%)、アピックヤマダ(約20%)となっており、各社には下記の機械的特徴やメリット・デメリットがあります
TOWA株式会社
出典:TOWA
1979年に「超精密金型」製造販売で工場を設立。1980年頃にはフレームを自動搬送して、小型のモールディング装置を連結するYシリーズ半導体樹脂封止装置の量産化に成功しました。
その後はシンガポールに現地法人を設立し、韓国や台湾、中国などアジアを中心に進出。現在は世界シェアの70%を占めています。
強みは、フェイスアップ方式だけでなくフェイスダウン方式も対応できる点です。一方、弱みは装置が大掛かりで、金型も精密加工が必要なデバイスもあり、高価となる点でしょう。
同社製品・装置は、汎用品、先端品などのあらゆるデバイスに対応できますが、比較的大規模で資本力のある製造メーカーへの導入に向いています。
アピックヤマダ株式会社(ヤマハロボティクスHD傘下)
出典:YMAHA
1953年に創業し、日本で初めて半導体チップをパッケージングする樹脂封止金型を開発・製造したメーカーです。
先に紹介したTOWAと同じく、フレームを自動搬送して3つの自動モーディングユニットを連結接続でき
装置を保有しています。
ただし同社はファイスダウン方式の装置は保有していないため、装置のラインナップがシンプルです。
TOWAに比べると、ユーザーの選択肢が少ない点は弱みですが、装置価格は安い点や海外シェアが低いことから国内生産に専念している点は強みともいえます。
また成形後にストレートなリードフレームを基板に実装できるようにリードを曲げるリード加工工程の
「リード加工装置」は、トップシェアです。また基板にマウントする装置も製造しており、モールディング装置単品で見た場合は小規模ですが、次工程の装置はTOPシェアである点も強味でしょう。
半導体モールディング装置の選び方
- まず適用する半導体のデバイスはなにか?
- 国内生産なのか?海外生産なのか?
- また海外生産の場合はどこで生産するか?などは重要です。
海外でのフェイスアップ方式は、TOWAの汎用装置を選択する。
国内生産で自動車用などの汎用品はアピックヤマダも選択肢として選定するのが良いでしょう。
フェイスダウン品は国内で十分試作して、海外でも対応できればTOWAの3モジュールのフルオプションも可能かと思います。
最近はTSMCが3DiCの開発研究を日本政府の援助も受けて設立予定で、九州にSONYとの競業でTSMCの製造を行うことが決まっています。半導体(後工程)の国内生産が回帰すれば、さらにコストダウンを計る装置が要求されるでしょう。半導体デバイスと半導体装置、半導体材料は自動車のEV化にも伴い、今後ますます伸びていく産業です。
半導体モールディング装置のまとめ
今回の記事では半導体モールディング装置について解説しました。今回の記事内容を簡単にまとめます。
- 半導体モールディング装置とは 半導体(後工程)のモールド工程で使用される機械
- 方式としては「フェイスアップ」「フェイスダウン」の2種類がある
- 主要メーカーは2社。TOWAとアピックヤマダが市場を独占している
- 半導体モールディング装置の価格相場は3,000万円~6,000万円程度と想定される