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半導体めっき装置の価格相場
半導体めっき装置の価格相場は非公開ですが、ラボ用など小型な機器は数百万円以上、製造ラインなど大型の機器は数億円となる場合もあります。
一般的に電解めっき装置のほうが、仕組みが複雑で大型になるため高くなります。
実験用の小型で手動なものから、大量生産用の大型で全自動なものまで価格の幅があります。
半導体めっき装置の種類
半導体めっき装置とは、ウエハの成膜工程で使用する産業用の機械です。
成膜工程とは、ウエハ上に「絶縁膜」「半導体膜」「配線膜」の3つの薄膜を形成するプロセスです。めっき装置は、そのなかでも配線膜を形成するために使われています。
分類としては大きく2つに分けられ、以下のような違いがあります。
①電解めっき装置
外部電源の電気エネルギーを使ってめっきする装置です。
ウエハを硫酸銅(CuSO4)などのめっき液に浸し、ウエハを陰極、銅板を陽極にして電流を流すと、ウエハ表面に銅の薄膜が形成されます。
あらかじめウエハの絶縁膜には、溝(トレンチ)や穴(ビアホール)をエッチングで掘り、配線パターンを形成しておきます。そこにめっきをかけると、溝や穴が銅配線になるという仕組みです。この技術はダマシン法と呼ばれています。正確にはめっき後に、CMP装置で余分な薄膜を研磨除去する工程が入ります。
メリットは、数μmレベルの微細な配線パターンに対応できることです。膜厚を厚くすることもできます。液管理が容易で長期的に安定しているため、コスト性とメンテナンス性に優れています。
デメリットは、ウエハを1枚1枚処理する枚葉式が基本となるため、スループット(時間あたりのウエハ処理枚数)を上げにくいことです。膜厚の均一性にばらつきが出やすいので、細かいセッティングも必要になります。
②無電解めっき装置
電気を使わず化学反応のエネルギーを使ってめっきする装置です。
メリットは、ウエハを複数枚同時に処理できるため、大量生産が可能なことです。UBM(Under Bump MetalまたはUnder Barrier Metal)と呼ばれる電極端子部分のめっきにおいては、電解めっきによるバンプ形成(突起電極形成)では必須の配線パターンが不要なため、工程を大幅に削減できます。膜厚も均一になりやすいです。
デメリットは、数μmレベルの微細な配線パターンには対応しにくいことです。膜厚を厚くすることは可能ですが、長い時間がかかるため向いていません。化学反応をコントロールするため、厳しい液管理(濃度や温度、pHなど)も必要になります。
半導体めっき装置を製造するおすすめメーカー
半導体めっき装置を扱う主要メーカーは、10社近くあります。その中でもおすすめのメーカーを2社ご紹介します。
株式会社荏原製作所
出典:荏原製作所
1912年(大正元年)にポンプメーカーとして創業。風水力関連の機械製造を主力に、半導体製造装置や環境プラントなど幅広く事業を展開しています。
半導体製造装置に関しては、ドライ真空ポンプやCMP装置が世界シェア第2位と有名ですが、めっき装置も活躍中です。
めっきの高速性と均一性を兼ね備えた装置を提供しています。
株式会社日立パワーソリューションズ
出典:HITACHI
1960年創業。エネルギーやインフラの分野において、製品・サービス・ソリューションを提供しています。
めっき装置の取り扱いは、実験用の小型めっき装置から、大量生産用の全自動めっき装置まで幅広いです。
少量での試作や研究開発のためのサンプルめっきも、受託サービスでサポートしています。
半導体めっき装置の選び方
数μmレベルの微細な配線パターンや厚い膜厚を要求される場合は、電解めっき装置を選択する必要があります。微細な配線パターンを求められず、薄い膜厚で問題ない場合は、無電解めっき装置を選ぶと工数を削減できます。
コストにかんしては、めっき工程単体でみると電解めっき装置のほうが安く抑えることができます。
一方、無電解めっき装置は、ほかの工程を削減できるためトータルでは安くなる可能性があります。導入コストも、無電解めっき装置のほうが仕組みが簡単なため安い傾向にあります。
めっき装置の選定時は、ほかの工程やメンテナンス性を加味したトータルのコストを考えるのが良いでしょう。
半導体めっき装置のまとめ
今回の記事では半導体めっき装置について解説しました。今回の記事内容を簡単にまとめます。
- 半導体めっき装置とはウエハの成膜工程で使用する産業用の機械
- 「電解めっき装置」「無電解めっき装置」にわけられる
- 主要メーカーは「荏原製作所」「日立」を筆頭に10社ほど
- 半導体めっき装置の価格相場は、ラボ用などの小型なもので数百万円程度~
- 製造工程向けの半導体めっき装置は、数億円程度~
■執筆担当者:つわもん 工場現場系フリーランスWebライター。製造業界および半導体業界で計7社を渡り歩く。 国内・海外あわせて20以上の工場で、現場をかいくぐってきたツワモノ。ただの器用貧乏なヨワモノとのうわさもあり。 |