今回の記事では「自動調心ころ軸受(スフェリカルローラーベアリング)」の、おすすめメーカーと価格相場について紹介します。
目次
自動調心ころ軸受(スフェリカルローラーベアリング)の種類
自動調心ころ軸受とは、ラジアル荷重(垂直)・アキシアル荷重(水平)どちらにも対応した調心性のある軸受(ベアリング)で、衝撃や荷重が強くかかる環境下の産業機械で主に使用されます。
どちらの荷重にも耐えられますが、ラジアル荷重とアキシアル荷重の比率が寸法表の値を超えると、故障の原因となるので、選定の際は注意しましょう。
自動調心ころ軸受を選ぶ際は、サイズや精度等級、許容回転数といった軸受の基本情報から選定を行いますが、合わせて防塵性のあるなしで下記2タイプに分類できます。
開放型自動調心ころ軸受:
保持器が外側から見えるタイプ。防塵性能は劣りますが、内径200mm程度であれば、代理店やメーカーに在庫がある場合が多く、比較的手に入りやすい点はメリットとなります。
シール付自動調心ころ軸受:
保持器の外側にシールが付き、内部への防塵・防水性が期待できます。メーカーによっては標準品として、シール付きを製造していない場合もあるため、置き換え時には注意が必要です。
自動調心ころ軸受メーカー各社のメリット・デメリット
自動調心ころ軸受を扱う主要メーカーは、14社あります。
軸受を製造しているメーカーは世界中に多数存在していますが、精度が要求される部品であるため、出来るだけ世界でもシェアを持っているメーカーの製品を選ぶことをおすすめします。
今回は14社の中でもトップクラスの品質を持つ3社をご紹介します。各社ともに機械の特徴やメリット・デメリットがあります。
日本精工株式会社(NSK)
出典:NSK
1916年に創業した国内初の軸受メーカーです。世界シェアは第3位、日本国内シェア1位のメーカーです。
日本国内にもグループ企業と合わせて10拠点以上の工場を有しています。そのため、特注品であっても部材が揃っている場合は、比較的納期が早い事もあります。
NSKの自動調心ころ軸受を選ぶメリットとしては、EA型と呼ばれる内部構造の自動調心ころ軸受(内径55mm〜120mmの軸受)は、NSKHPSを採用しており、負荷容量が大きく、200℃までの高温にも耐えられる高機能軸受になっています。
デメリットを強いてあげるとすれば、自動調心ころ軸受のカタログ基準の許容回転数が、他社相当品より低い点です。
SKF
出典:日本SFK
SKFは1907年スウェーデンで創業し、1932年に日本SKFが誕生しました。ベアリング全体の世界シェアは、トップを誇ります。
自動調心ころ軸受のカタログ掲載製品として内径20mm〜1800mmまである点は、世界トップシェアを誇るSKFのメリットです。ただしサイズの大きい製品は受注生産品がほとんどです。
デメリットとしては、日本は国内メーカーが強いため、日本市場が重要視されていない点が挙げられます。
特にHPの製品詳細が日本語にローカライズされていないため、製品・型式検索が不便です。また自動調心ころ軸受の分野では在庫品の場合、国内メーカーより単価が高い傾向にあります。
株式会社ジェイテクト(JTEKT)
出典:JTEKT
JTEKTは、2006年に豊田工機と光洋精工が合併したことで誕生したトヨタグループの機械部品メーカーです。
前身が豊田工機であるため、工作機械でも強みを持ちます。軸受の刻印は光洋精工からそのまま「KOYO」です。
テーパ穴型の自動調心ころ軸受には、シャフトを取り付ける際の補助となるアダプタや取り外しスリーブが付けられますが、ジェイテクトでは軸受だけでなくアダプタや取り外しスリーブも製造しているため、セットで発注することが出来ます。
デメリットは、カタログ標準製品では内径20mm〜180mmと少ない点です。また価格競争の激しい汎用品の工場を地方に移管し、特殊素材軸受に注力するなど、製造ラインへの影響も今後注視していく必要があります。
自動調心ころ軸受の価格相場
自動調心ころ軸受の価格相場は需要の高いサイズで2千円(内径20mm)~3万円(内径120mm)と幅が広いです。
標準品のシールありなしでは、シリーズによって価格差は違いますが、平均して2割り増し程です。特殊環境で使う特注品となると標準品の2倍以上になることもあります。
自動調心ころ軸受の選び方
自動調心ころ軸受の選び方として、以下の点に着目するのが良いでしょう
- 手に入りやすさ
- 価格面
またアフターケアを重視する場合は国内メーカー、ラインナップの豊富さやサイズの大きい製品を探す場合は世界シェアの高い海外メーカー…などの選定方法もあります。
注意点としては、軸受メーカーを置き換える場合、内部構造が異なるなど仕様面で変更が加わるため、メーカーや代理店などに互換性に問題がないかは必ず確認しましょう。
自動調心ころ軸受(スフェリカルローラーベアリング)のまとめ
今回の記事では自動調心ころ軸受について解説しました。今回の記事内容を簡単にまとめます。
- 自動調心ころ軸受とは 産業用機械で使用される精密機器・部品である
- 主に「開放型自動調心ころ軸受」「シール付自動調心ころ軸受」
- 主要メーカーは「NSK(日本精工)」「SFK」「JTEKT(ジェイテクト)」などをはじめとした14社
- 自動調心ころ軸受の価格相場は2000円台~3万円台。ただし大きさや細かなスペックなどで100万円以上の高額商材もある